性感染症の種類と症状
クラミジア感染症
最も多い性感染症の一つです。尿道の不快感や排尿時の痛みがありますが、無症状の方も少なくありません。男性は尿道から、女性は膣から半透明のサラサラとした膿(うみ)が出ることがあります。性行動の多様化から、男女とも咽頭感染が増加しています。放置すると女性は頸管炎や骨盤腹膜炎などから不妊に繋がることもあるため、早期に発見し治療することが重要です。
近年、耐性菌が多く報告されており、1回の治療で改善しないこともあり、必ず治癒したかを確認することが重要です。淋菌感染症に同時感染している場合が多いため、両方の検査を行うことが推奨されています。当院では咽頭、尿ともに検査可能です。検査は保険診療であれば結果は数日で分かります。感度は若干落ちますが、当日検査にも対応しております。
淋菌感染症
最も多い性感染症の一つです。男性では特に排尿時の強い痛みと黄白色の膿(うみ)が特徴でクラミジア感染症よりも症状が強いことが多いです。女性は子宮頸管炎を起こし、膿性のおりものが増えます。性行動の多様化から、男女とも咽頭感染が増加しております。放置すると不妊につながることもあるため、早期に発見し治療することが重要になります。
近年、耐性菌が多く報告されており、1回の治療で改善しないこともあり、必ず治癒したかを確認することが重要です。クラミジア感染症に同時感染している場合が多いため、両方の検査を行うことが推奨されています。当院では明らかな症状が認められる場合は即日治療まで迅速に行えます。
梅毒
粘膜や皮膚の小さな傷から梅毒トレポネーマという細菌が侵入し発症する性感染症で、近年、爆発的な増加傾向です。皮膚症状から脱毛、内臓や神経症状など多様な症状を呈します。また、初期の皮膚症状は一旦消失してしまうため、受診しなかったり、治療を中断してしまう方がいるため注意が必要です。適切な抗菌薬治療が行われれば第3、4期にまで進行することはほとんどありません。早期に治療を開始しないと治療に時間を要します。梅毒の方はHIVに同時感染されている方が多いと言われているため、梅毒感染時には、HIVの同時検査が推奨されています。
第1期(感染後1ヶ月程)
性器に痛みや痒みを伴わないしこりや潰瘍(えぐれたような皮膚症状)ができます。鼠径部(足の付け根)のリンパ節が腫れることがありますが、こちらも痛みは伴いません。いずれの症状も自然に改善することがあります。
第2期(感染後3ヶ月程)
全身に梅毒トレポネーマが広がり、バラ疹と呼ばれる小さな赤い発疹が手足や体に多数出現します。こちらも自然に改善することがあります。第1期の陰部のしこりや全身のバラ疹で受診されることがほとんどです。3期以降は日本ではほとんどみられません。私も後期梅毒は数例経験したのみですが、治療が遅れると重症になります。
第3期(感染後3年程)
皮膚、骨、筋肉などにゴム腫と呼ばれる硬いゴムのようなしこりが出現します。
第4期(感染後10年程)
神経や血管にまで広がり、さまざまな症状を引き起こします。
性器ヘルペス
感染部位に水疱(水ぶくれ)や、それが破れてただれた状態になります。病変部の皮膚のヒリヒリ感やむずがゆさ、強い痛みを伴うことが多く、尿道内に出現すると排尿時痛を感じることもあります。肛門周囲やおしりにも症状が出現することがあります。1年以内に8割以上が再発すると言われており、過労・セックス・ストレス・紫外線などの刺激で再発することが多いです。
再発が多い場合には再発抑制療法という長期間、抗ウィルス薬を内服する治療法があります。最近ではあらかじめ薬を処方し、再発時のピリピリを感じた時にすぐ飲んでいただくPIT療法で患者様も治療満足度が高いと感じております。ぜひご相談ください。
尖圭コンジローマ
性器や肛門周囲に特徴的ないぼ(カリフラワー状)ができます。ほとんど痛みはありませんが、下着に引っかかるなどにより出血や痛みが出ます。また、かゆみを伴う方もいらっしゃいます。液体窒素や軟膏の外用、外科的な切除による治療があります。非常に再発率の高い性感染症の一つで、3ヶ月以内に4人に1人は再発する可能性があり、治療と、その後の定期的な外来受診がとても重要です。放置すると外来では治療困難となってしまうため、早期治療が重要です。
膣トリコモナス症
トリコモナス原虫の感染によって発症します。あわ状で悪臭の強いおりものが特徴で、外陰部や膣の痛みと強いかゆみが出ることもあります。男性に感染した場合は比較的軽症が多いです。性行為だけでなく、下着やタオル、便器、浴槽からの感染の可能性があるため注意が必要です。尿路へのトリコモナス感染の場合には、初診で診断に至るケースが少ないため、必ず再診の上、治癒の確認と治療方針の検討が重要です。
カンジダ感染症
膣内の常在菌であり、病気や疲労、ストレスなどにより免疫力が低下したり、妊娠中に症状が出やすいです。症状の多くは、外陰部や膣のかゆみであり、ヨーグルト状のおりものが増えます。男性の場合には、そのような状態の女性との性行為を経て感染することがあります。抗真菌薬の投与を行うとともに、ご本人の体調を整えることが重要です。
HIV感染症
感染早期(2~4週間)は、発熱、咽頭痛、だるさなどの感冒症状が出る方がいます。その後は、数年ほど症状がない期間がありますが、徐々に全身の免疫力が低下し、条件を満たすとAIDS発症の診断に至ります。感染した人の血液や精液、膣分泌液、母乳などが粘膜に接触することで感染します。なお、汗、涙、だ液、尿、便などの体液の接触による感染の可能性はありません。HIV抗体スクリーニング検査を血液検査によって行いますが、感染後2ヶ月以内は感染していても結果が陰性と出てしまう可能性があるため(ウィンドウ・ピリオド)、感染から3ヶ月以上経過した時期に検査を受けることで信頼性の高い結果を得られることが国内ガイドラインにも記載されています。
他の性感染症に罹患していると、HIV感染のリスクは数倍にもなることが分かっています。特に、梅毒の方はHIVに同時感染されている方が多いと言われているため、梅毒感染時には、HIVの同時検査が推奨されています。当院でも積極的に検査していきます。